「ものづくり白書2018」 経営者必読!製造業が直面する4つの危機・課題とは!?

文部科学省と経済産業省、厚生労働省の3省合同で作成される「ものづくり白書」2018年の内容は?(出典:経済産業省ウェブサイト)

「ものづくり白書」とは、日本の基幹産業の1つである製造業について、日本政府が講じる施策に関する報告書で、文部科学省と経済産業省、厚生労働省の3省合同で作成されます。
2018年度版の内容は?要点をまとめましたので、チェックしてください。

日本の製造業が直面する4つの危機とは?

大規模な環境変化の中、日本の製造業は以下に挙げる「4つの危機」に直面しており、全ての経営者がそれを理解し、経営主導で対応していくことが推進されています。

monodukuri2018 * 経済産業省HPより出展


【1】人材の量的不足に加え、質的な抜本変化に対応できていないおそれ

  • 人材スキル変化、デジタル人材不足
    技能人材をはじめ、人手不足が顕在化しています。今後の労働力人口の減少を見据えれば、以下の様な取り組みが待ったなしとなっています。

    【取り組み1】人材活用の制度的な工夫
    【取り組み2】労働生産性の向上に向けた人材育成
    【取り組み3】ロボットや IoT、AI などの先進ツールの利活用

    → 第四次産業革命が進む中、期待されるスキルも大きく変質
    → デジタル人材の圧倒的な不足は深刻であり差し迫った課題

  • システム思考欠如
    大きな変革期の中で、新たなビジネスモデルへの転換を含め、抜本的な変化を実現する上では、ビジネス全体を俯瞰して全体最適化を図る「システム思考の強化」が果たされないと、海外に遅れを取るおそれが高い。

【2】従来「強み」と考えてきたものが、成長や変革の足かせになるおそれ

  • すり合わせ重視、取引先の意向偏重
    我が国のものづくりの現場は、取引先との長期的な取引関係と信頼関係を前提に、商品の企画開発段階からの「擦り合わせ」を重視し、取引先の高い満足度を得て、存在感を示してきた。

    しかしながら、この方法は、ともするとコストの高止まりや、場合によっては、消費市場が何を求めているかといった点を全て取引先に委ねてしまうという受動性の助長をもたらす裏腹の弱みがある。

    このことは、上述のとおり、「モノ」それ自体の競争という側面が減退し、「モノ」によって市場にどのような付加価値をもたらすか、という競争となっている状況下では、致命的な欠陥となるリスク(例えば、市場の求めていない「モノ」を作り続けてしまうリスク)がある。

    特に、「擦り合わせ」を通じて取引先の意向を尊重することによって持続されてきた我が国のサプライチェーンにおいては、一部の企業が変革を目指してもサプライチェーン全体の意向が揃わなければ変革が実現されない。

    その意味で、高い擦り合わせ力や顧客ニーズ対応力といった従来の「強み」が、成長や変革の足かせとなりかねない

  • 品質への過信
    品質管理(検査)データ不正の問題が発生した遠因も、取引先との長期的な信頼関係への甘えと消費者視点の欠落にあるとの解釈も可能である。

  • 【3】経済社会のデジタル化などの大きな変革期の本質的なインパクトを経営者が認識できていないおそれ

    • ITブーム再来との誤解
      現在進展するデジタル革新は、類似のモノを作り出す能力が世界各地で高まり、モノに対する相対的価値が低下する中、 顧客が求める価値が「モノの所有」から「機能の利用」や「価値の体験」へと移行し、モノだけでなく、モノを利活用したサービス・ソリューション展開が価値獲得の鍵を握り始めている

      特に経営資源としての「データ」の重要性は著しく高まっており、世界では多くの企業がデジタル投資に邁進し、バリューチェーン全体の最適化に向けた競争を進めており、一部には、ビジネスモデル の転換にまで踏み込んだ価値創出の動きも見られる。

      他方、我が国においては、現在の状況を単に 2000 年前後の IT ブームの再来 と受け止める向きも一部には存在するなど、必ずしも、デジタル化のもたらす本質的な産業構造、社会構造へのインパクトが理解されていないおそれがある。

      • 足元の好調な受注による慢心
        特に中小企業の場合には、足元での好調な受注などにより、現在起きている抜本的な変化の本質に気づいていない、あるいは気づかずに目を背けてしまう、といった傾向も見られ、このままでは将来の致命傷となりかねない。

      • 【4】非連続的な変革が必要であることを経営者が認識できていないおそれ

        • ボトムアップ経営の限界
          【3】及び【2】に述べたとおり、これからの変革は、その性格上、従来の成功体験の延長ではない、非連続の取組が必要となることは論を待たない。 当然のことながら、過去にも、周囲にも成功事例が存在するわけでもなく、企業経営としては、自らがリスクを負って判断していかねばならないものではあるが、これまでの体験からか、どうしてもボトムアップ型の企業経営に依存する傾向から脱することができず、現実のアクションに結びつけきれていないことが多い。

          • 自前主義の限界
            技術革新のスピード、課題の複雑化などが進む中、いわゆる「自前主義」の限界が露呈しており、全てを「競争」領域として捉えることなく、「協調」領域の拡大により、真の「競争」分野への投入リソースの集中を行うことが求められてきている。その意味で、今後、積極的に他者とつながり、価値を高めていく連携構築力こそが期待されるが、この点について、全てに「自前主義」にこだわれば、真の「競争」に参画する機会すら逸しかねない。



          • ――――以上、大規模な環境変化に伴って、全ての経営者が持つべき4つの危機感を挙げました。

            【まとめ】

            景気が回復傾向にあり、業績も好調な企業が多く見られる今こそ、このような危機感を共通認識として持ち、戦後培ってきた日本の強みを上手く活かしつつ、変革につなげていくことが不可欠である。

            そのためには、新たな環境変化に対応した付加価値獲得のあり方や、深刻化する人手不足の中での現場力の維持・強化といった経営課題を的確に把握し、経営主導で、先進ツールなどの利活用や変革期に必要となる新たな人材の確保などを通して目の前の経営課題の解決、さらにはあらゆる変革への対応を積極的に進めていくことが求められている。

            ※ 白書では、具体的なアクションの参考となる先進事例を約150例紹介されていますので、ご参考にしてください。
            本文途中の「コラム」に掲載されています。【一覧はこちら】